東京都で将来の妊娠・出産に備える卵子凍結への最大30万円の支援が行われたこともあり、卵子凍結について興味を持っている方も多いのではないでしょうか?
しかし、日々のカウンセリングの中で卵子凍結に関するご相談をいただく機会が増えていますが、正しい認識を出来ている方というのは意外と少ないように感じます。
例えば「卵子凍結をしておけば、いつでも出産できる」というもの。
全部が間違っているわけではありませんが、卵子凍結はあくまでも”出産の可能性”を残してくれるものです。必ず出産できるわけではありません。
「今はいい人に出会えないけど、そのうち卵子凍結でもしておけば将来出産できるし大丈夫だろ~」とのんびり構え、いざ本格的に卵子凍結を検討したタイミングで「思ってたのと違う…」と後悔だけはしたくないものです。
今回は卵子凍結に関する”正しい情報”をお伝えしますので、卵子凍結に興味がある・検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
※本記事は内容の特性上、医学的情報を掲載しています。細心の注意を払ったうえで情報を掲載していますが、正確な情報については必ず専門機関を通してご確認ください。
先に結論!
メリット
- 卵子凍結した年齢の妊娠率・流産率を維持できる
- 健康な赤ちゃんの誕生を期待できる
デメリット
- 自費診療で費用が高い
- 毎年凍結の維持費がかかる
- 採卵時に副作用や感染・出血のリスクがある
- 凍結していた卵子で必ず妊娠できるわけではない
- 高齢出産のリスクは変わらない
- パートナーの倫理的な理解が必要
かかる費用
- 30万円前後(クリニックによる)
- 凍結後は毎年3万円~5万円の更新費用が必要
その他
- 通院は4~5回が目安
- 40歳以上の採卵は推奨されていない(日本生殖医学会の意見)
- 45歳以上の卵子凍結を利用した妊娠は推奨されていない(日本生殖医学会の意見)
- 東京都は最大30万円の助成金がある
卵子凍結とは
卵子凍結とは、将来の妊娠に向けて現在の卵子を採取・凍結し、保存しておくことです。
年齢と共に卵子自体も老化&数が減少するため、年齢を重ねるほど『妊娠率は低下』『流産率は上昇』します。
日本産科婦人科学会の2021年の調査によると、高度生殖補助医療(体外受精を取り扱う治療のこと)の妊娠率は35歳を境に低下、流産率は上昇している結果が出ています。
そこで、20代や30代前半などの若い年齢で卵子を凍結保存しておくことで、30代後半や40代になっても出産できる可能性を高めることができます。
元々、卵子凍結はがん治療による卵巣機能への影響を回避するために行われていました。
しかし、最近では女性の社会進出に伴い、晩婚化→高齢出産となるケースも多く、その結果、健康な女性でも卵子凍結を行う事例が増えています。
身体が40代になったとしても、卵子が20代であれば20代の時とほぼ変わらない出産率を期待できるためです。
「今はまだ仕事を頑張りたい」「結婚したい相手に出会えてない」だけど、それと同時に「若いうちに出産しておかないと不安」という気持ちを持った方の妊娠の選択肢を広げてくれる意味では非常に有効な方法です。
卵子凍結の流れ
1.診察・検査
まず最初に病院で診察・検査を行い、卵子凍結が可能かを医師が判断します。行う検査は血液検査や超音波検査、AMH検査など。ホルモン値、卵巣機能、卵子の数(AMH値)を確認していきます。検査時間は1~2時間ほど。結果が出たら具体的なスケジュールを決定していきます。
2.排卵誘発
排卵誘発剤を使用し「排卵誘発」を開始します。通常、1回の生理周期で排卵される卵子の数は1~2つですが、この数だけでは妊娠の確率が低いため、排卵誘発剤でより多くの卵子を採卵するわけです(どの程度の個数の卵子が採卵できるかは個人差があります)。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれる副作用があります。卵巣が大きく腫れたり、お腹に水が溜まったりなどすることで、腹部膨満感、胃部不快感、尿量減少、体重増加などは症状として現れます。年齢が若かったり、痩せている方ほど卵巣過剰刺激症候群になりやすいと言われています。
ただ、卵巣過剰刺激症候群を含め、卵子凍結の過程で発生する副作用やリスクは必ず初回診察時に医師から説明がありますので、必要以上に不安になる必要はありません。
3.採卵
採卵手術は10分ほどで終わります。膣に超音波機器を入れ、超音波画像をみながら卵巣の中の卵胞(卵の入った袋)に採卵針(採卵専用の針)を刺し、卵子を採卵します。
確率は低いですが、針を使った施術であるため膣内を出血したり、感染を起こすことがあります。
4.卵子凍結・保管
採卵した卵子は顕微鏡で確認され、受精可能な卵子が凍結されていきます。マイナス196℃の超低温な液体で凍結された卵子は何十年も状態変化なく保管できます。
5.凍結した卵子で妊娠
卵子凍結から数ヶ月~数年後、パートナーができ、妊娠を希望すると凍結しておいた卵子での体外受精ができます。凍結した卵子を融解し、針で卵子に精子を入れて受精卵へと変化させる顕微授精が採用されるケースが多いです。
卵子凍結にかかる費用
卵子凍結にかかる費用は『凍結まで』と『凍結後』に分けることができます。
『凍結まで』は初診から採卵後の凍結までにかかる費用です。病院ごとに行う施術が異なったり、その人ごとに行われる施術が異なるので微妙な差異はありますが、概ね30万円前後の費用がかかります。
『凍結後』は凍結した卵子を維持するための費用です。年間3万円~5万円の費用がかかります。
<一般的な費用の内訳>
・初診・再診代
・エコー検査・感染症検査などの諸検査費用
・排卵誘発(卵巣刺激のための投薬・注射等)費用
・採卵費用(局所・全身麻酔により料金異なる)
・卵子凍結保存(凍結した卵子数により、卵子凍結代と卵子保管料が変わる)
・1年後の凍結保管延長費用
卵子凍結の明確な費用相場を出すことは難しいです。なぜなら卵子凍結は自由診療にあたるため、細かな費用がHP上に記載されないことも多いためです。パック料金で提示してあるクリニックもあるくらいです。具体的な料金については、初診で確認してみましょう。
卵子凍結による妊娠率
2013年のアメリカの論文によると、ガラス化および加温後(凍結した卵子の融解後)の卵子生存率は90%~97%、受精率は71%~79%、着床率は17%~41%、移植あたりの臨床妊娠率は36%~61%、解凍卵子あたりの臨床妊娠率(CPR)は4.5%~12%という結果が出ています。
該当の論文:Fertility Steril 2013; 99: 37-43, Mature oocyte cryopreservation: a guideline
ただし、論文内にも記載がありますが、サンプル数が少なく、かつ30歳未満の健康な若い卵子提供者から採取した卵子のみで行われた研究であるため、30歳以上で卵子凍結を行った場合はより低い妊娠率になる可能性があります。
また、凍結した卵子の質に関わらず、妊娠時の年齢が高齢になるほど妊娠率は低下していくため、通常の妊娠と同じように若い年齢であるほど妊娠率を上げることができます。
卵子凍結は何歳までできる?
日本生殖医学会では40歳以上の採卵、45歳以上の卵子凍結による妊娠を推奨していません。そのため、40歳未満の採卵に制限している病院を見受けます。また、卵子凍結の更新に関しても45歳までであったり、45歳を超える場合は毎年診察を行ったうえで更新許可の有無を出してもらえるケースもあります。
卵子自体は若く良質なものであっても、高齢出産のリスクを回避することはできません。母体の健康を考えると、30代までの妊娠・出産が推奨されているようです。
最近では、婚活会員様も、事前にブライダルチェックを済ませていることや、卵子凍結をしていることなど、プロフィールに盛り込まれている方を目にするようになりました。実際、健康意識の高さや誠実さのアピールにもなりますし、将来の家族計画にも真剣であることなどは伝わりますね。ですが、お相手へのプレッシャーにもなりかねず、婚活でのアピールには慎重な判断が必要です。
妊娠・出産を視野に入れた婚活を始めてみませんか?
もし、まだ本格的なパートナー探しを始めていない場合は、婚活を始めてみてはいかがでしょうか?
卵子凍結は妊娠の選択肢を増やしてくれますが、まだまだリスクやデメリットも多く、万人におすすめできるものではありません。仮に卵子凍結できたとしても妊娠が確実ではない点も注意が必要です。
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